構造的円安の真実 (2026年1月版)
〜EC実務者が「IT×物流DX」で利益率を守り抜くための戦略論〜
UPDATE: 2026年1月24日 (実務現場からのフィードバック反映版)
再び迫る「1ドル=160円」の衝撃。為替は単なるマクロ経済の話ではなく、今日送る荷物の送料、今日仕入れる商品の原価に直結しています。構造的円安はなぜ止まらないのか?
本記事では、2023年から2026年初頭にかけての円相場の激動と、その背景にある構造変化を解説します。また、「現場のオペレーション」と「ITシステム」の両面から利益を確保する具体策についても、実務者の視点で解説します。
円相場の現在地:160円の「悪い円安」再燃
乱高下する3年間。2026年は再び「円急落」の局面へ。
2026年1月、ドル円レートは再び159円台を記録。2024年の為替介入と米利下げ期待で一時は円高へ振れましたが、2025年後半から潮流が変わりました。政権交代に伴う財政不安(高市リスク)により、足元では再び160円を窺う歴史的な円安水準にあります。
⚠️ 現在(2026年1月) の状況 :2024年の巨大介入のラインを窺う危険水域にあります。市場は「160円」の防衛ライン(マジノ線)を巡る攻防戦に入っています。
【データ】ドル円レートの推移(直近3年)
| 時期 | レート (JPY/USD) | 状況 |
| 2024/04 | 160.0 | 歴史的円安・介入 |
| 2024/09 | 140.5 | 一時的な円高局面 |
| 2025/12 | 158.5 | 財政懸念による再下落 |
| 2026/01 | 159.5 | 160円再接近 (現在) |
今回の円安は「悪い円安」の色が濃くなっています。日米金利差が縮小傾向にあるにも関わらず円が売られる背景には、日本の財政規律や経済構造への不安があります。これは「待っていれば円高に戻る」という楽観論が通じないフェーズに入ったことを意味します。
EC現場を襲う「見えないコスト」の正体:「金利差」と「円相場」の乖離 (Divergence)
私は現在、EC事業者様から「在庫管理・梱包発送」および「IT・DXサポート」を一括で受託しています。現場で見える「三重苦」のリアルは以下の通りです。
1. 仕入れ原価の爆騰: 1ドル140円時と比較し、仕入れだけで15%以上のコスト増。
2. 物流・副資材の連鎖値上げ: 燃料費高騰による運賃改定に加え、梱包資材などの石油製品も容赦なく値上がりしています。
3. 価格競争の激化: 利益が削られる中、単純なコスト転嫁だけではシェアを失うリスクがあります。
金利差は縮まっているのに、なぜ円は売られるのか?ここに、今回の円安の「質の変化」があります。
円安の性質が変わった
- これまでの円安: 「アメリカの金利が高いからドルを買う」
- → 金利差主導(正常な動き)
- 現在の円安 (2026): 「日本の財政が悪化しそうだから円を捨てる」
- → 日本リスク(悪い円安)
- ※高市政権の積極財政による国債増発懸念などが背景
【データ】金利差縮小と円安進行のパラドックス
以下の表を見ると、金利差(B)は縮小しているのに、レート(C)は円安へ動いていることがわかります。これが「悪い円安(日本売り)」の証拠です。
| 時期 | (A) イベント | (B) 日米金利差 | (C) ドル円レート |
|---|---|---|---|
| 2023後期 | 金利差拡大局面 | 5.5% | 150円 |
| 2024前期 | 160円ショック | 5.0% | 155円 |
| 2024後期 | 日銀利上げ・米利下げ | 4.0% | 140円 |
| 2025前期 | トランプ再任 | 3.5% | 148円 |
| 2025後期 | 財政規律への懸念 | 3.2% | 155円 |
| 2026現在 | 「悪い円安」定着 | 3.0% | 160円 |
実践:スモールスタートで始める「利益防衛DX」
「システム投資」と聞くと身構えてしまいますが、まずは手元のGoogleスプレッドシートを使い倒すことから始められます。段階的なDXこそが、意思決定を速め、利益を守る鍵です。
STEP 1:スプレッドシートによる「自動計算」の導入
わざわざサイトを見に行かなくても、為替レートを自動反映させ、原価の「今」を可視化します。
GoogleFinance関数の活用: \=GOOGLEFINANCE(“USDJPY”) ひとつで、常に最新のレートで仕入れ原価や損益分岐点を再計算できます。
メリット: 意思決定の遅れ(「いつの間にか赤字だった」)をゼロにします。
STEP 2:Google Workspaceによる「情報の自動連携」
次に、手作業のコピペを減らします。
GAS(Google Apps Script)の導入: 届いた注文メールや在庫変動を、スクリプトで自動的にスプレッドシートへ集約。
メリット: 入力ミスをなくし、発送作業(アナログ)へスムーズに繋げます。
STEP 3:GCP(Google Cloud)へのステップアップ
事業規模が拡大し、データ量が増えてきた段階で、より堅牢なシステムへ移行します。
データベース化: スプレッドシートの限界を超えたら、BigQueryやSQLを活用した高度な在庫分析へ。
メリット: 過去の販売データから「将来の需要」を予測し、円安時の仕入れタイミングを最適化します。
現場(アナログ)とIT(デジタル)を繋ぐ役割
私は、在庫管理という「実務」を引き受ける一方で、上記のような「段階的なITサポート」をセットで提供しています。
自動化できる部分: ルーチンワークや計算をIT(Googleツール等)に任せ、人件費を削る。
自動化できない部分: 商品の丁寧な梱包、顧客へのメッセージ、そして「次に何をすべきか」の経営判断。
ITの力で「作業」を減らし、事業者が「商売の本質」に集中できる環境を作ること。それが、円安という逆境下でパートナーに求められる真の価値だと考えています。
まとめ
2026年の円安は、EC事業の「健康診断」のようなものです。大がかりなシステムを入れる必要はありません。まずはスプレッドシート一枚から、コストを可視化し、無駄を削ぎ落とす。この「現場発のDX」こそが、不透明な時代を生き抜く唯一の道です。
システム構築から現場の発送実務まで。現場の最前線で利益を守り抜くパートナーとして、共にこの時代を乗り越えていきましょう。
*金龍@EC著:ウェブマスター兼EC実務支援者(IT・物流DXサポート)*

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